鉄錆地六十二間筋兜付龍蒔絵横矧五枚胴具足

兜           錆地鉄板六十二枚を矧ぎ合わせ筋兜とする。天辺はなだらかで前頭にやや膨らむ姿形をとり、後正中鉢裏に「相住早乙女家貞」と鐫る。早乙女家貞なる甲冑師は数代に亘ると目されるが、江戸前期に活躍し、常陸のち相模小田原に住した早乙女家四代目が著名である。八幡座は七段、裏菊を底として赤銅表菊、裏菊、縄目、小刻、赤銅宝瓶、玉縁を重ねる。鋲飾は四天鋲と響孔を中ほどに設け、高めに打った笠印付鐶は欠失してその痕跡のみを残す。裏朱漆塗の眉庇は共鉄素文、蜻蛉尻で先端をW字刻、二孔縦列とした祓立台を置いて三光鋲で留め、金銅前立を迎える。𩊱は両面黒漆塗の鉄板札六段を紺絲で素懸に威し、当世形に開く。肩摺板は黒皺韋を表に貼り、畦目と一段菱縫を香色絲にて飾る。一段目を吹返し、絵韋貼として鍍金梅鉢紋を据え打つ。

面具       鉄錆地烈勢頬。銀歯と口髭を植え、頬に折釘を打つ。顎先に丸い汗抜孔を穿ち、耳に古風な六曜を透かす。垂は五段で、仕立は𩊱に通ずる。

胴           鉄板札を前立挙三段、後四段、長側五段に張留め、黒漆を塗って桶側とした五枚胴で、板札裏は一面白檀塗韋張として立胴とし、前正中表に丸龍を蒔絵する。前立挙一段目と長側五段目のみ紺絲毛引威として変化もみせる。金具廻りは表に黒皺韋を貼り、裏は箔押とする。肩上は背板から蝶番で繋ぎ、黒漆塗板札三段の小鰭を付し、先端からは仕立を同じくした蝶番繋二段の杏葉を具える。満智羅は亀甲金を紺羅紗で包んで香色絲で菱綴し、黒糸を這わせ韋覆輪とし、後述の臑当の仕立に通ずる。草摺は練韋板札の頭を異形に刻み付け、七間五段を腰革付し、前正中裏には前袋を具える。裾板も同様に札頭を刻み、菱縫を二段とするほかは肩摺板に仕立てを通ずる。本胴は両乳鐶を取り払っており、背の角合当理は「コの字型」の金具を排して中央から一本伸ばしたものとし、受筒、待受を具える。

三具       縹地木綿に菖蒲文を染め抜いた家地を共通する。鉄錆地五本篠籠手は各篠間に丸形の金具を繋ぎ、上膊に三ツ折蝶番の金具を並べ、鎖を仕込んだ添脇引を付す。手甲には吹返と同じ据紋金物を打ち、大指部に枝梅の切鉄を飾る。練韋本小札の佩楯は一文字と力韋に菖蒲韋を用いて踏込式とし、左右下両端四箇所に鐶を打つ。七本篠臑当は中央篠に鎬を立て、鉸具摺は白檀塗韋を充てる。

付属       黒塗一荷櫃に収まる。

Rusest Iron 62-Ridge Suji-kabuto(Helmet)
Included Five-Piece Yokohagi Armor
With Dragon Maki-e Lacquer

included pair of chests,helmet with inscription “Soji Saotome Iesada“